常本八のブログ

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【女神の継承、ミッドサマー 他】儀式系ホラーを観た話

怖え~~~~~~~~~~~!!!

 

ミンちゃん、こんなになっちゃって......

 

除霊、はやくして~~~~~~~!!!!!

 

本編を見た今だととんでもないトラウマです。暗くてわかり辛いですが、この映像に彼女、映ってるんですね......

 

 

こんにちは、常本 八と申します。

 

 

ちょっと前に上映終了間際だった「女神の継承」という映画を観てきました。

 

今まで観た映画の中で1・2を争うくらい怖く、かなり好みの映画でした!

 

目に見えない存在との対話するため、お香を焚いたり糸を張り巡らせたり、動物の頭を捧げたり......

非日常のみで構成された儀式には、一種の美しさとおどろおどろしさが感じられていいですね。

 

そういうわけで、降霊・除霊や宗教をテーマにした「儀式系ホラー」にはまったのでした。

 

もう秋真っ只中で季節外れとなってしまいましたが、最近観た「儀式系ホラー」の感想を書きました。

 

 

 

 

女神の継承

 

 

あらすじ

タイのある村ではバヤンという女神の信仰が根付いており、女神の巫女が世襲制で引き継がれている。現在の巫女はニムという女性。ニムを取材するテレビクルーのモキュメンタリ―で話が進む。

 

ある日ミンという娘に「何か」が憑依する。ミンの体調は瞬く間に悪化し、想像を絶するような奇行を繰り返し始める。ミンに憑いたのは悪霊か、それとも次代巫女を継承させようとする女神の仕業か。

現巫女のニムをはじめとする祈祷師らが祈りをささげ、ミンが助かる方法を探す。その祈りの結末はいかに。

 

 

感想(ネタバレなし)

生々しく、描写の細かい宗教儀式が特徴的でした。

東南アジア特有のジメジメ感が画面越しに伝わってきます。

 

それに加え、これでもかという位用意されている恐怖演出。

特に、記事の冒頭にも紹介したナイトビジョンのシーンは怖すぎて心臓が止まりそうでした……

 

山奥にある女神バヤンの石像は神聖な雰囲気が漂っており、カメラで撮影することすら罰当たりな気がしてなりませんでした。特にニムが叫ぶ例のシーンでは、「いけないもの見ちまった」というような気分になりました。

ただの石像のはずなのにね。信仰心のたまものだよね。

 

ニムが生卵を割り、土砂降りの中祈り続けるシーンが印象に残っています。視聴中は生卵を捧げることにになんの意味があるのか不思議でした。比較的身近なものである卵を生の象徴ととらえ、生贄の代わりにしているのでしょうか。

 

観終わった後は、入場者特典のステッカーすら持ってるだけで呪われそうで不安でした(数日して恐怖心も薄れてきた頃にスマホケースに貼りました。)

ふた月ほど前からこの映画の広告を部屋に貼っていたのですが、悪霊に憑りつかれそうなので即刻はがしました。いい映画でした。

 

 

このポスターが一番好き。

 

 

感想(ネタバレあり)

最後のシーンでニムは、「女神が本当に存在しているのかわからない」と告白しました。

この発言により、作中での祈祷の必要性が根本から否定される可能性が出てきてしまいました。

 

ミンに憑りついた悪霊は確かに存在しています。

卵の中身が黒くなったり成人女性が赤子の声を出したりなど、常識では考えられない怪奇現象が起こっていたからです。

 

それでは、女神バヤンの方はどうでしょう。本当に存在していたのでしょうか。

 

色々考えた結果、私は「女神は存在しない」と結論付けました。

女神は存在しないというより、存在すると断定できないといった方が正しいかもしれません。

 

ミンがニムの問いかけに抵抗し暴れるという場面がありましたが、結局悪霊を退治するに至りませんでした。また、ミンは作中悪霊の正体を亡くなったミンの兄だと推察しましたが、その考えは誤っていました。

女神の存在を証明するようなエピソードはついに劇中描かれないまま終わってしまったのです。

 

人々に明確な影響を及ぼしていた悪霊とは対照的に、何の影響も及ぼさなかった女神など(たとえ存在していたとしても)いないに等しいのではないでしょうか。

 

最後の儀式でノイにバヤンが憑りついたようなくだりがありましたが、あれは所詮ノイの演技にすぎないと思います。

急に線香を逆向きに突き刺したことで、周りにいた人たちが「どういった意味があるのですか」とうろたえていたシーンは少し笑えました。

所詮儀式は意味ありげな行動をとっているにすぎず、行動に明確な理由などもとから存在しないということを示しているのではないでしょうか。

 

女神はあくまで人間の不安を肩代わりするために考えられた、都合のいい存在にすぎないのかもしれません。

 

そういえば、もう一つ疑問に思ったことがあります。

それはなぜニムは息を引き取ったのか、ということです。

私は、信仰心がカギであると考えました。

 

よく、「心のよりどころを有している人は強い」といわれます。

私は、悪霊が、心のよりどころを有していない人間に憑りつき操ることができると仮説を立てました。

それゆえ女神バヤンを信仰している巫女ニムや、キリスト教を信仰しているノイには憑りつけなかったのです。

 

しかし、ニムはこの事件の一件で女神を信じられなくなってしまい、心のよりどころを失ってしまいました。

そこで生じた弱さに付け込まれ、ニムは悪霊に殺されてしまったのだと考えました。

 

また、最後の儀式で参加者がが狂暴化してしまったのも、儀式が失敗したのではないかという疑念と恐怖で皆が心のよりどころを失ってしまったためだと考えました。

 

例えそれが存在しないものだったとしても、心のよりどころを持つというのは大事なことなのかもしれません。

 

 

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出典:「女神の継承」予告編

この車は赤い。

 

 

ミッドサマー

公式のテンションが凄い。

こんなに素敵なツイートなのに、見る環境によって絵文字がしょぼくなっていたりするのが勿体ないと思いました。

 

 

あらすじ

とある大学生のグループはペレという留学生に彼の地元、スウェーデンの村の夏至祭に誘われる。

主人公であるダニーは、彼氏がスウェーデンの村に行くと聞き、ついていくことにした。

 

スウェーデンの村、ホルガ村には独特の文化が根付いていた。村に到着したダニーらは手厚いおもてなしを受け、楽しんでいた。

しかし、とある儀式を目の当たりにしてからというもの、村の印象は一変してしまう。

奇妙な祭りに翻弄されていく彼ら。

一体、見ず知らずの村でどうなってしまうのか。

 

 

感想(ネタバレなし)

「明るいホラー」と言いたいところですが、監督曰くこれはホラーではないそうです。人を恐怖させるという点に主眼を置いた作品ではないというメッセージだと解釈しました。

とはいえ、この映画を観て恐怖しない人はほとんどいないと思います。

 

ホルガ村のシーンはカラフルで、シンメトリーを意識した構図など独特な絵面が多く挟まれます。

また、衝撃的なグロシーンや奇妙な性描写があります。

 

タペストリーや壁を装飾するタイルが印象に残っています。

タペストリーのイラストが伏線になっていたりするらしいのですが、私はそこまで解読する気になりませんでした。

目が渦巻いているタペストリーが特に不気味で、いまだに頭から離れません。

 

また、劇中に何度か出てくる長机の場面。長机の配置がルーン文字を示しているという考察を見かけ、興味深いと感じました。

 

この独特の不快感はこの映画でしか得られないと思います。

そういった意味で価値のある作品だし、面白いと思います。ただ、もう一回見れるかと聞かれたら無理かもしれません。

この記事を書くにあたりもう一度観ようか迷いましたが、序盤数分で断念してしまいました。ディレクターズカット版もあるので、心に余裕があるときに観てみようと思います。

 

よかったと評価する人と、これはちょっと.....と評価する人に分かれている印象があります。人を選ぶ作品には間違いないので、評価が二分するのもわからなくもないと思いました。

 

なんだかんだ言って個人的には大好きです。

 

 

るまじはが祭祝

 

 

感想(ネタバレあり)

メイクイーンとなったダニーは、焼けていく小屋を見ながら笑みを浮かべました。

これは、自分を真に受け入れてくれるホルガ村という場所を見つけ、加えて今までの自分を縛っていた存在と別れることができた喜びから笑っているのだととらえました。

 

しかし、普通はこんな残虐なことが目の前で繰り広げられたら恐ろしくなると思います。それに、もともと仲間だった人々が焼き殺されているのを見て笑顔になるというのは、どんな憎しみや呆れの気持ちがあったとしても異常ではないでしょうか。

 

このことから、ダニーは一種の洗脳状態に陥っていたのではないかと考えました。村の人々は、心が弱っている人につけ込んで村の教えを信仰する市民を増やしてるのでしょうか。

それならば、この後ダニーは村の一員として人生を全うすることになるのでしょうか。

それとも、ダニーはこの後クリスチャンのように生贄にささげられてしまうのでしょうか。

 

ペレがホルガ村の訪問を持ち掛けたのは、夏至祭で生贄とする人間を連れてくるためでした(また、外部の人間の子供を授かり、村の中が近親者だけになるのを防ぐという目的もあると思います)。

それゆえ、もともとダニー達は生贄として使い捨てるための存在だったはずです。

しかし、ダニーは結局メイクイーンという重大な役職に就きました。村の外から来た人が急にそんな重要な役につくのには違和感を感じます。

 

この後にメイクイーンが生贄にささげられる儀式が待っていて、数少ない村人を減らさないためにあえて外部から来た人間をメイクイーンにしたのだとしたら、この行動にも納得がいきます。この村の住人だったらやりかねませんね。

 

とはいえ、ダニーは無事でいてほしいです。そうでなければ救いがなさすぎますからね。

 

狂った思想がはびこるコミュニティーの描写が見事でした。

 

 

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出典:「ミッドサマー」予告編

 

 

ヘレディタリー/継承

そんなこと言わないでおくれ。

 

 

あらすじ

グラハム家の祖母であるエレンが息を引き取るところから話は始まる。

グラハム家は夫スティーブ、母アニー、息子ピーター、娘チャーリーの4人家族。

 

ある日ピーターは友人からパーティーに誘われる。

ピーターは母に車を借りていいか尋ねるが、パーティーに行くならば妹のチャーリーを連れて行くように言われる。

 

しぶしぶながらもピーターはチャーリーを連れていくが、パーティー先で口にしたケーキでチャーリーはアレルギー発作を起こしてしまった。

 

急いでチャーリーを病院に連れて行くピーターだが、その道中とんでもない事件が起こってしまう……

それを皮切りに、様々な悲劇がグラハム家を襲うようになる。

この一連の悲劇には、誰の思惑が絡んでいるのか。

 

 

感想(ネタバレなし)

急に死体が出てくるのでびっくりします。

母アニーの精神が狂っていく演技が上手でした。

悲痛な叫びや疲れ切った表情は、演技と分かっていても気持ちが落ち込みそうでした。

 

21世紀もっとも怖いホラー映画と呼ばれているので相当な覚悟を持って挑みましたが、思ったほど怖くありませんでした。不安さで満ちた部分がずっと続く感じなのでホラー映画の嫌な部分を凝縮したような作品だと感じました。

 

最後5分ほどがミッドサマーに似た雰囲気でした。

静かな夜に観たら怖いだろうなと思います。

 

 

感想(ネタバレあり)

アニーはジオラマ作家であり、作中でも度々グラハム家をはじめとした映画の様々な場面をジオラマで作っていました。

映画の一場面を俯瞰するジオラマは、グラハム家の行動が何者かの手中にあることを暗示しているかのようでした。

 

作中様々な場面でグラハム家の人々の前に「光」が現れます。

物語の最初、この光はチャーリーにしか見えていないようでした。しかし、話が進み家族の精神が浸食されていくにつれ、グラハム家の人間は皆この光を認知するようになりました。最終的にこの光はピーターに乗り移り、ジョーンからペイモンの召喚が完了したことを告げられます。

 

このことから、この光はペイモンそのものを表しているのだと考えました。グラハム家の人々は終始ペイモンに監視され、もてあそばれていたのだと思います。

 

それこそはじめから、家族の運命はペイモンやペイモンを召喚しようとしていた祖母エレンの手中にあったといえるかもしれません。

 

思い返せば、この作品は「そういえば、意味深なこと言ってたな~、書いてたな~」といった細かな考察要素が丁寧に散りばめられていたように思います。

 

巧妙な伏線と不気味な雰囲気こそが、多くの人の印象に残った所以なのかもしれません。

 

 

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出典:「ヘレディタリー/継承」予告編

 

 

(おまけ)哭声/コクソン

儀式がメインの映画というわけではないのですが、女神の継承の共同執筆及び制作に携わっているナ・ホンジン氏が監督をしている作品ということで興味がわき、観てみました。

 

 

あらすじ

韓国のある村で、錯乱した住民による一家惨殺事件が立て続けに起こる。容疑者の体には必ず謎の発疹が現れていた。

 

小さな村で起こる不穏な事件の数々に村の住民は恐怖を抱いていた。そんな中、山に住む怪しい日本人の男が関わっているのではないかという噂が流れるようになる。

 

この奇妙な事件を担当している警察、ジョングは男についての調査を始めることにした。

 

ジョングが男の家を訪れてからというもの、娘ヒョジンの様子に違和感が現れ始めた。苦手なはずの魚をほおばり、何かにとりつかれたかのように罵詈雑言を吐くようになったのだ。

また、ジョングは娘の体に例の湿疹が現れていることに気づいた。

 

いったい、村には何が起きているのか。

一連の事件の首謀者は誰なのか。

 

 

感想(ネタバレなし)

娘の演技が上手でした。

あんなに小さいころから感情のコントロールが意識的に行えているという事実に驚きます。韓国映画はいつも子役の演技に驚かされている気がします。

 

なぜか思い返すたびに自分の中での評価が高くなっている不思議な映画です。

清書の引用があるので、聖書の知識があるとより楽しめると思います。

私は聖書については聖☆おにいさんで読んだ内容くらいしか知らないので、映画を味わいつくせなかった感じがあります。

 

 

感想(ネタバレあり)

結局誰が怪奇現象の大本だったのでしょうか。

怪しげな登場人物が複数出てくるこの作品では、この疑問を抱いた人が多かったと思います。

 

私は、國村隼演じる奇妙な日本人の男が首謀者だと考えました。

 

この作品には、ふたり「人ならざる者」が出てきます。

一人目は、日本人の男。確実に殺されたかのように思われてもなお復活していたことから人間ではないことは確実だと思います。

二人目は、謎の女です。突如消えたり祈祷師に怪現象を起こしていたことから、人間ではないように思えます。

 

男は、祈祷合戦のときに死体を蘇生させる呪術をかけていました。

奇妙な呪術を扱え、かつ村を助けようとしている具体的な描写がなかったので怪奇現象の大本である可能性が高いと考えました。

 

呪術師は男とグルである可能性が示唆されていました。理由は、劇中終盤で呪術師が事件現場の写真を撮っていたからです。男の家の祭壇に貼ってあった大量の写真は、呪術師が男に提供したものであると考えられます。

呪術合戦の差異呪術師は男を呪い殺そうとしますが、男は不死(復活することができる)であるということを知っていたと考えると不自然ではありません。

 

一方、謎の女はジョングの味方だったのだろうと思います。

男とグルである祈祷師に制裁を加えたり、ジョングに「鶏が3回鳴くまで家に帰るな。この言いつけを破ったら家族は全員死ぬ。」と助言し、結局その通りになった点がそれを裏付けています。作中の発言だけでは善人か悪人かの判断はできなかったものの、結局正しい忠告をしていました。

 

これらのことを踏まえ、作中の事件を起こした首謀者は男である可能性が高いと予想しました。

 

生き返った男の手にはキリストの様な穴が開いていました。また、洞窟を訪れたイサムにお前は何者かと問われた際、なんと言ったところでお前の考えは変わらないだろうねと吐き捨て、鬼の様な見た目変貌していきました。私は、これが誰が犯人なのか混乱している私たち視聴者に対し向けられたメッセージなのだと考えました。

例えその人が村を救おうとする善人(キリスト)だったとしても、疑いのまなざしをもっていれば次第に悪者に見えてくるものだ、ということを伝えたかったのだと思います。実際作中でジョングは、味方をしていた謎の女が悪者だと決めつけてしまいました。

 

とはいえ、謎の女はもっとジョングと対話すべきだったと思います。ちゃんと話し合いをしないと相手の理解は得られないのですから。

 

 

www.youtube.com

出典:「哭声/コクソン」予告編

 

 

まとめ

女神の継承はバンジョン・ピサンタナクーン監督コクソンは韓国の監督であるナ・ホンジン監督、ミッドサマーとヘレディタリー/継承はアリ・アスター監督の作品です。ナ・ホンジン監督は女神の継承で共同執筆及び制作にもかかわっています。

 

同じ監督の作品を続けざまに見ると、似たシーンこのシーンが改良されてあの作品があるのだなと、表現技法の進化に気づけて面白いですね。

 

 

「哭悲 The Sadness」と「呪詛」が怖くていいと聞いているので、機会があれば見てみようと思います。

 

 

さようなら。

よかったらまた読みに来てください。